監査対応でもっとも人手と神経を使うのは、往査・実地手続が始まる前の資料準備のフェーズです。監査法人や内部監査部門から渡される依頼資料リストをもとに、各部門へ資料を依頼し、集め、不備を差し戻し、期日までに整える——この一連の「集める・催促する・突き合わせる」仕事は、社内で完結する部分だけでも大きく自動化できます。会計監査と内部監査では目的や責任主体は異なりますが、被監査側が資料依頼を受け、社内から資料を集め、提出状況を管理し、不備を解消する実務には共通点があります。本記事では、この「被監査側の資料準備」に焦点を当て、どこを自動化でき、どこは人が担うべきかを整理します。
被監査側から見た監査対応の全体像 — 4つのフェーズ
会計監査(監査法人による外部監査)でも内部監査でも、監査対応の骨格はほぼ共通です。大きく次の4フェーズで進みます。
| フェーズ | 主な作業 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| 事前準備・予備調査 | 監査計画の策定、監査通知、依頼資料リストの展開、資料の回収、予備的なヒアリング、リスクの識別・評価、監査手続への反映 | 監査計画、依頼資料一覧、リスク評価結果、監査手続書 |
| 往査・実地手続 | キックオフ、インタビュー、証憑・書類の閲覧、監査調書の作成、発見事項の整理、講評 | 監査調書、発見事項一覧 |
| 結果報告 | 監査報告書の作成・確認、経営層への報告 | 監査報告書 |
| フォローアップ | 指摘事項の改善状況の確認、次年度への繰越事項の整理 | フォローアップ調書・報告書 |
※「実査」は、現金・有価証券などの現物確認を指す狭義の監査手続です。本記事では往査時の手続を広く「実地手続」と表記します。
このうち、被監査側(監査を受ける会社)の負担がもっとも集中するのが、事前準備・予備調査フェーズの資料回収です。往査当日の対応や会計判断よりも、実は「往査前に資料をそろえきる」ことに現場が疲弊しています。
なぜ「事前準備」で現場が疲弊するのか
監査人から渡される依頼資料リスト(いわゆるPBCリスト=Prepared By Client。監査人が会社側に用意を求める資料の一覧)は、勘定科目や業務領域をまたいで数十〜数百項目にのぼることも珍しくありません。ここで起きているのは、次のような「終わりの見えない追い回し」です。
- 展開の手間:どの項目を、どの部門・拠点の誰に依頼するかを仕分けし、一件ずつ連絡する
- 進捗管理の属人化:誰に何を頼み、いつが期日で、どれが未提出かが、担当者の頭やスプレッドシートの中にしかない
- 不備の差し戻し:日付・承認印・金額・整合性などの不備を見つけては、相手に説明し、直してもらい、また確認する
- 証憑との突き合わせ:提出された証憑と台帳・残高を照合し、差異があれば原因を確認する
- 追加依頼への追われ感:往査中に監査人から追加資料を求められ、締め切りに追われながら再び現場へ依頼する
これらは会計や監査の専門的判断そのものではなく、「集める・催促する・突き合わせる」作業です。にもかかわらず、担当者の時間と——相手を急かす気まずさという——心理的な負担を確実に削っていきます。
監査対応のどこを自動化できるか
ここが本記事の肝です。自動化できるのは、社内で完結する「集める・確認する・催促する」作業であり、監査人とのやり取りの判断や、社外への確認、会計上の最終判断は人が担うべき領域です。事前準備フェーズの作業ごとに整理すると、次のようになります。
| 作業 | 自動化 | 担い手・補足 |
|---|---|---|
| 依頼資料リストの各部門への展開・依頼 | 担当ごとに自動で依頼 | |
| 提出状況の管理と未提出の催促 | 一覧で可視化・自動リマインド | |
| 提出資料の不備の一次チェック | 日付・承認・金額・必要項目を自動確認 | |
| 不備の差し戻し・再依頼 | 不足点を添えて自動で差し戻し | |
| 証憑と台帳の突き合わせ | 一次照合まで、差異の判断は人 | |
| 監査対応資料・回答メモの整理 | 下ごしらえまで、結論は人 | |
| 監査人からの追加質問への回答判断 | 人が担う | |
| 監査上の外部確認 | 確認自体は対象外(確認先候補の整備・連絡先の収集・社内承認・進捗共有は自動化可能) | |
| 会計処理・監査見解の最終判断 | 人が担う |
※外部監査における監査調書は監査人が作成するものです。会社側が作成・整理するのは、提出資料・回答メモ・差異説明資料・補足資料などにあたります。
ポイントは、無理に全部を自動化しないことです。監査人への回答の判断、社外への確認、会計処理の妥当性といった専門的判断は、人が責任を持って行うべき領域です。「集める・催促する・突き合わせる」を自動化して人の手を空け、判断の質にこそ人が時間を使える状態をつくる——これが現実的で、監査対応の信頼性も高める方向です。
自動化で現場はどう変わるか
- 担当者が「未提出者を追い回す」仕事から解放され、分析・説明・判断に集中できる
- 誰に何を依頼し、どこまで集まったかが一覧で見えるようになり、属人化が解消する
- 不備の差し戻しが即時・自動化され、往査前の詰まりが減る
- 監査調書や証跡が整理された状態でそろい、往査当日がスムーズになる
これは、先に紹介した催促・リマインド業務の自動化を、監査という「毎年必ず来る繁忙」に当てはめたものとも言えます。
導入のポイント
- 依頼資料リスト(PBC)を起点にする — 何を・誰に・いつまでに、が明確な資料依頼は自動化と相性が良い出発点です。
- 一次チェックのルールを決める — 「何をもって不備とするか」(必須項目、承認、日付、金額の整合など)を定義しておきます。
- 人の最終確認を必ず挟む — 自動化は無人化ではありません。AIが不備を検出しても、差し戻すかの最終判断は人が持てる設計にします。
- 社外確認・専門判断は人の領域と線引きする — 取引先・顧客への確認や会計判断は自動化の対象から外し、境界を最初に決めておきます。
段階導入のすすめ
- 資料の依頼・回収・催促から始める(もっとも負担が大きく、効果が見えやすい)
- 次に不備の一次チェックと差し戻しを自動化する
- さらに証憑の突き合わせや調書の下ごしらえへ広げ、人は判断に集中する
一番つらい「資料回収と催促」から着手すると、往査前の混乱が目に見えて減り、社内の納得も得やすくなります。
よくある質問
Q. 会計監査でも内部監査でも使えますか?
はい。監査人(監査法人や内部監査部門)からの依頼資料をもとに、社内で資料を集めて整えるという構造は共通です。会計監査・内部監査のいずれの事前準備にも当てはまります。
Q. 監査法人とのやり取りそのものを自動化できますか?
資料の回収・整理・進捗管理は自動化できますが、監査人からの質問への回答内容の判断や、社外への確認は人が担うべき領域です。自動化はあくまで社内の準備作業を対象とし、判断は人に残します。
Q. どこから始めるのが効果的ですか?
依頼資料リストの各部門への展開と、未提出の催促からです。ここは定型的で発生頻度が高く、担当者の心理的負担も大きいため、費用対効果が高い出発点になります。
まとめ
- 監査対応の負担は、往査前の資料準備のフェーズに集中する
- 自動化できるのは、社内で完結する「集める・確認する・催促する」作業
- 監査人への回答判断・社外への確認・会計上の最終判断は人が担う——ここは無理に自動化しない
- まずは資料の依頼・回収・催促から始め、人は判断の質に時間を使う
No Interface の監査対応支援は、各部門への資料依頼、提出状況の管理と催促、不備の一次チェックと差し戻しまでを AI が引き受けます。社内の「集める・催促する」を自動化し、担当者は監査人との対応や判断に集中できます。
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